飛騨平湯峠より見た飛騨山脈乗鞍岳

ウェストンは行く先々で、銀の鉱脈や水晶発掘の目的ではない山登りを日本人からたいそう不思議がられます。この平湯峠から安房峠を越える時の表現が大変素晴らしい物があります。今は安房トンネルが完成し殆どの車両がそちらを利用するために、旧道が少しですが昔の静けさを取り戻しつつあります。

ウェストンの文章は、どちらかといえば旅行日記や備忘録ともいうべき簡潔な文章です。それなのに水のような流れに浸れます。無駄がありません。単に無駄がないのではなく、小さな旅籠や村と邑のあいだの道の名前やその特徴も一言程度ではあっても、必ず綴ってあります。谷が細くなった、気温が少し寒くなった、気がついた事の全部を書いています。だけどしつこくはなく、淡々と日本の風景、風俗、習慣を綴っています。

ウェストンの功績は、素晴らしい物です。ただ思うにそれ以上にウェストンの残した文章から「人間ウェストン」が見え隠れし、それの魅力に惹かれてしまいます。ウェストンが綴った文章を思いながら是非この峠を徒歩で越えて見たくなるほどの名文です。


大正2年8月19日ウェストンは平湯を訪れます。公衆浴場で不謹慎な日本人の男が女湯に入って行き、フランセスをジロジロ見ているので、私は大声で彼を追い払ったとあります。人間ウェストンが垣間みれる面白いエピソードです。

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